料 金



   フィリピンでは日本のような健康保険制度がないので、本人に支払能力がない場合には私立の良い病院では診察治療を受けらない。日本では、健康保険制度があり患者本人に支払能力や支払意志がなくても、医師は診療費用の大部分を保険から直接受け取る事が出来るので、あまり診療拒否は起こらないと同時に、診療拒否をするような医師はとんでもない医師という感覚が強いようである。しかし、フィリピンでは医師も病院も患者本人から料金を徴収できない場合にはすべて奉仕になってしまったり、わざと料金を払わない等というケースが頻発するために原則として前払い的な考えが一般的である。フィリピンでは、料金に関しては価格統制がないので病院によって料金もかなり違う。良い私立病院は金持ちの為に準備された料金の高い病院であり診療の質の高い病院だというのがフィリピンの病院システムである。それぞれの階層のために様々な設備や医師の質や料金の違う病院が存在し、フィリピン人達は自分の病気の内容と経済状態によって病院も使い分けている。収入の少ない人達は、収入によっては無料でも診療が提供されることのある公立の病院に行く事になる。しかし、このような公立の病院の中にはは安い医療を提供しなければならないため、日本人に取っては不満足な診療しか受けられない場合もあり問題が起こる事が多い。良いといわれる病院では、料金が高く支払能力のチェックが厳しく持ち合わせがなければ診療拒否に合う事も希ではない。1997年末には、「いかなる病院も救急患者の治療を拒否してはならない」という法律が施行された。しかし、この法律により信頼できる病院に初期治療を頼みたいという支払能力の無い低所得者層も良い病院と言われる私立の病院にかかる事になり、今後経費を節減する必要にせまられる高所得者層対象病院の初期診療検査の質が落とされる可能性があることが懸念される。日本中どこでも健康保険制度に守られてかなり均質の医療を享受している日本人の中には、フィリピン医療の国民の貧富の差に基づいた経済背景によるそれぞれの病院の設立基盤や質の違いに気が付いていない者が多いようである。フィリピンでは患者は自分の経済レベルに応じた医師や病院を選ぶのが当然とされ、それに見合った医師や病院が準備されている。そして病院、医師と患者の間には医療費の支払いに関しては暗黙の了解が出来ていてその範囲での医療が組み立てられていると考えてよい。そのような中で、本来高額の料金設定をしている医師や病院を利用したあげくに医療費が高すぎるとか値切りを試みて担当の医師や病院関係者から顰蹙をかっている例も数多く見うけられているので注意が必要である。すべての人が同じ医療を受けられるのが当然であると主張しても、現にそれが出来ていない外国では無理といいう者である。むしろ、その国の人がうまく利用しているように病状にあわせて適切な料金の病院を利用していく立場をとらざるを得ないのではないだろうか。フィリピンで満足のいく良い病院で緊急時の医療を受けるためには、常時それに見合うだけの現金を準備して置くか、支払能力を示すような身分証明所などを持っていなければならない。ある私立病院にかかる為には緊急時に備えて、救急車の為に約1500ペソをそして入院などを考えると前金として他に約5000ペソを準備して置かなければならないであろう。この金額はフィリピン人の多くの人の月収にもあたる金額である。取扱いには十分注意しないと、犯罪を誘発しかねない状況になりうる。そのため一概にこのような現金を緊急に備えて常時持ち歩きなさいという提言が出来ないところが、フィリピンでの救急医療の整備の難しいところでもある。しかし、現金を持ち歩かなくても、病院側も支払意志と支払能力の確認が出来れば診療拒否をしようとは考えてないようなので、身分証明書などで支払能力が証明できるものがあればいつも携行した方が良いだろう。

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