病院での分娩



   最近はフィリピンで分娩をする日本人も増えている。フィリピンの病院は、オープン病院のシステムで独立したオフィス開業医としての産科医と患者に施設や補助要員を提供する場であり、入院をすると他の専門医が非常に利用しやすい環境にある。分娩に際しても無痛分娩も麻酔科の専門医が管理にあたる。当然 異常に際しての帝王切開なども特に問題はない。しかし、産後の入院期間は日本より極端に短い。自宅分娩が多いわけであるから大家族や地域の協力体制も整っており、フィリピン人にとっては産後の管理を自宅で行ってもあまり問題はない。日本人にとっての問題は産後にある。しかし、日本のような看護婦助産婦が病院での必要定数の確保も難しい国と違って、フィリピンでは看護婦助産婦を経済的な余裕があれば個人的に雇う事が一般的に行われている。病院に入院中でも、このようなプライベート ナースをつけるシステムもあるし、退院後もそのまま雇う事ができる。短期入院の欠陥はこのような形で補われている。入院管理よりも、専門職を使って自宅で静養した方が経済的にメリットがあるという人件費の安さが背景になっている。なお、日本では助産婦や保健婦は、正看護婦有資格者が1年以上の専門教育を受けてからさらに国家試験をパスしなければならない制度なので、助産婦の資格レベルの方が看護婦よりも高い。しかし、フィリピンでは助産婦は看護の産科に関する面だけに選択的に与えられている資格であり、看護婦よりも資格レベルも給与も低いので注意が必要である。

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