狂犬病



   狂犬病は、日本では犬の登録制度やそれに伴う犬への予防接種の義務化でお目にかかれなくなった疾患である。狂犬病は病原体ウィルスが唾液を通して動物に感染するとその神経を侵し、興奮性の時期を経てついには全身の麻痺を起こし確実に死にいたる怖い病気である。発症してしまえば100%助からないと言われており、フィリピンではまだ50人程度が毎月この疾患で興奮期の異常行動に対処する為の鉄格子の入った病室で死亡していると言われる。感染する動物は犬には限られず猫やウサギなどの人間以外の動物にも感染して発病し死にいたらしめる。このために犬以外の動物による人への感染も5%程認められている。麻痺期の始め頃に水を飲んだ時に喉頭などの麻痺を誘発して独特の症状が現れる為に恐水症という別名もある。この病気、幸いな事に動物に噛まれた直後からワクチンを投与していくと発症を防ぐ事が出来、フィリピンでは動物に噛まれると直ぐに医師の所に駆けつけてこの処置を受ける人が年間6万人に登ると報告されている。WHOの提唱によるこのような発症を予防する為のワクチン接種は21日間以上を要するが、動物が感染していて異常行動を起こして噛んだ場合は10日以内に何らかの異常行動を観察できるので、それ以上の期間噛んだ動物を観察して問題がみとめられなければ感染の危険が少ないとして予防接種を中止する事が出来る。噛んだ動物を捕まえて確実に観察する事が重要だとされている。日本では全くなじみのないこの病気。日本人の中には動物に噛まれる事の重大性が分からず医師に相談する事も少なく、中には使用人などが動物に噛まれた時の恐怖感が理解できずトラブルになるケースさえ見られる。この病気に対する無知は時には確実に死亡にいたらせる性質のものであり、日本人にとっては特別に危険な病気の一つといっていいであろう。

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