性感染症



   性感染症には、男性に尿道炎として症状のでる淋菌、クラミジア等、女性に膣炎として症状のでるトリコモナス、カンジダ等の代表的な病原菌がある。両方に出るものでは尖形コンジローム、梅毒なども重要な病気である。さらに最も恐れられるようになったエイズも考えなければならない。これらの感染の危険性は複数との性交渉によって伝搬されるので性道徳や社会的な性行動のあり方によって大きく影響をうける。日本では性病予防法により梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症が届出を義務づけられており対策がこうじられている。しかし、淋病、梅毒以外は発生が希である事と、淋病、梅毒も抗生物質により容易に治癒してしまうので届けられる事も希になりつつある。

   この中で、最近最も関心を集めているのがエイズである。WHOは1994年各国の推計感染者数を発表している。この主な国の数字と人口10万人当たりの感染推計者数をご紹介する。

           総数    人口10万当たり

日本      6200      5.0

フィリピン  18000     27.4

タイ    700000   1195.0

マレーシア  30000    116.0

シンガポール  1200     41.8

インドネシア 50000     26.4

   人口当たりの数字は総人口に対するものであるので、性活動期の人口比も考慮しなければならないが、フィリピンは他のアジア諸国に対して決して高いわけではない。一方、低く推計されている日本については、1996年1月から10月までに献血によって検査された5049753件に34件のエイズ感染血液が見つかったと言うデータを基に、輸血者年齢層が16才から65才までの人口の約70%と仮定して推計してみると約58800人、人口10万あたり約47という驚くべき数値が出てくる。これは悪い意味ではフィリピンをはるかに追い抜いている数字でもある。

   日本のエイズによる累積死亡者数は1996年10月までで839人、フィリピンでは1996年8月までで145人と報告されている。

   このようにデータ的には、まだフィリピンはエイズに関して比較的安全な国に入ると思われる。宗教的な背景からか複数との性交渉の比率は低いと推測される国であり、政府の対応も商業的性交渉や麻薬等の薬物乱用による感染など重点を定めた対策をたてているようである。一般には性感染症が広がりにくい性道徳を持つ国での推計値の高さは、特定の性関連職業の範囲には非常に高い頻度でエイズが集中的に存在している可能性もあり一層の注意が必要であろう。

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